自由世界共通の価値観を持つ国が、必ずしも「中国NO」とは限らない暗澹たる状況の中で

いま月刊Hanada 2020年7月号を読んでいます。この中に思わず暗澹たる気持ちにさせられたレポートが掲載されていました。

 

ドイツ在住の作家・川口マーン惠美さんのレポートです。「独大衆紙習近平に宣戦布告」と題したレポートで、読んでいて最初のうちは「そうかドイツでも、それほどまでに中国NOの意識が高まっているのか」といった気持ちでした。

 

ところが、川口さんの論点は別のところにあったようです。

最後まで読んで「自由世界共通の価値観を持つ国であれば、当然のごとく中国のような監視と抑圧、弾圧による強権政治を押し出してくる国に「NO」という点でも連帯できるはずと思っていたけれど、いったい、現実には、その点で連帯できる国が、どれほどの数なのか」暗澹たる気持ちにさせられました。

気が付けば、連帯しているのは日本とアメリカだけという有様にさえ、なりかねないことを知りました。

 

川口さんのレポートをかいつまんでご紹介しますと、

・ドイツ大衆紙の一つ「ビルド」が「中国は我々にどれだけの借りがあるか」というタイトル、「ビルド紙がコロナ請求書を提示」というサブタイトルの記事を掲載した。

・すぐさま中国大使館から厳しい反撃が公開された。

・普通なら、中国大使館の怒りを買った者なら、誰であろうと謝罪しなければ収まらないはずが、ビルド紙編集主幹は、謝罪どころか攻撃の勢いをさらに強めた書簡を発表した。さながら「習近平への宣戦布告」である。

・これにおそらく一番度肝を抜かれたのは同業者であるジャーナリストたちに違いない。ここまで中国に盾突ける人間はトランプ大統領以外知らない。

・ところが、ドイツの主要メディアは、このビルド紙と大使館の応酬について、一言たりとも触れず完全に無視していたことから、私がこの応酬を知ったのは、日本人ジャーナリストが教えてくれたからだった。

・ドイツメディアでこの応酬を報じたのは、あまり有名でない社が2本と、国営ラジオ局の1本だけ、しかも、その報じ方ときたら、3本とも、あまりにも侮蔑的で底意地が悪く、憎悪に満ちている。

・ビルド紙を貶めるだけでなく、中国礼賛を、よくここまでできるものだと思うほど。解せないのは、どこから、このように強固な親中思想が出てくるのか。

アメリカ支配より中国の支配のほうがよいというのは、あまりにも思考の飛躍のように感じられるのだが・・・。

・ところが、ドイツ人の中国贔屓は半端ではない。中国とドイツ間には歴史問題もなく、ここ10年あまり年を追うごとにドイツ経済が中国市場に依存してきた。

・ドイツ企業の多くがチャイナマネーの恩恵にあずかり、政治家は中国を丁重に扱い、メディアも悪く書かなかった。

・それどころか、EUで中国が不利な扱いを受けそうになると、率先して助けたのがドイツ政府だったのだ。中国の機嫌を損ねることは国家のタブーだった。

・私が少しでも異議を申し立てれば「日本人は中国人と仲が悪いから」、それどころか「日本人は中国で蛮行を働いていたくせに、批判するとは反省がない」

・12月になると歴史番組として「南京大虐殺」が登場し、日本の評判は必ず地に落ちた。

・しかし、である。いくら100年来の中国贔屓のドイツ人といえども、現在のコロナ騒動での中国の行動には、さすがにあれっと思っている人は増えた。

 

川口さんのレポートは、このあと「中国とドイツの良好な関係はメルケル首相をして『中国はわが国にとってアジアで一番大切な国』と言わしめるほどになったが、もしかするとドイツ人の親中感情には小さなヒビが入りかけているのかも知れない。ドイツ人には、これまでのように経済だけでなく、歴史、文化、思想的な側面からも、中国を冷静に分析してみて欲しいものだと思う(以下略)」と結んでいます。

 

G7の一員であり、国連の常任理事国から外されている主要国という共通の立場にある日本とドイツですが、自由世界共通の価値観を持つという点で連帯できる国なのかといえば、そんなものは、何の根拠もない期待であり、ノー天気な観測だということを、まざまざと感じさせるレポートです。

 

それにしても日本の対ドイツ外交は何をしているのでしょうね。中国があれだけ国家をあげて外交・経済戦略として親中感情の醸成を展開しているのに、彼らはただ口に指をくわえて見ていたと言われても反論できない無策・不作為ぶりです。

 

本当に暗澹たる気持ちになります。一体、どの国を頼りに「自由世界共通の価値観を持つ国同士の連帯」を図ればいいのでしょう。フランスもイギリスも、さして変わりはなく、かれらはポツダムヤルタ体制の勝ち組ですから、ドイツ以上に連帯を深めるのは難しいでしょう。

 

言えることは「だからと言って、あきらめては中国の属国になる道を選ぶということであり『自由世界共通の価値観を持つ国』が連帯することだけが、中国の世界支配から逃れる唯一の道だということを、日本の命運を賭けて世界に訴え続けなければならない」ということです。

 

個々の内政も揺るがせにできないことは論を待たないことですが、世界の中の日本、自由世界共通の価値観を持つ国と、世界の覇権を握ろうという野望を抱く中国とのはざまに置かれている日本という国家観を明確に持ち、世界に訴え続け、リーダーシップをとれる指導者を持ち続けなければならないことも明白です。

 

そのことを埒外において、誤った指導者選びをすれば、つまり、内政だけしか見えていない人に国を委ねてしまっては、日本は世界の中に埋没してしまい、じわじわと中国の属国への道を進むことになります。

 

いまは2012年秋と同じぐらい、いや、それ以上、日本は岐路に立っています。

もはや、信じるしかない選択です。安倍晋三しかいないのだと。

内閣支持率がどうの、コロナ対策がどうので、国の将来を誤らないことです。