安倍政権の陥穽はどこにあるだろうか

まず迫る消費税引き上げ可否の難しい判断
 
安倍政権に対する国民の支持が安定的に高く、1週間後の参議院選挙も勝利できる見通しだ。
基本的に「ねじれ」が解消できるという、国際的にも、国民経済的にも重要な担保が得られるのがいい。
 
おそらく国民の過半数は、あと3年は安定的に政権が続いて欲しいと願っていると思う。
中国や韓国との関係がよくないことについて、特定のマスコミはゴチャゴチャ言っているが、多くの国民が「安倍総理のスタンスでいいんだよ、何もこちらから頭を下げて関係改善してくださいなどという必要はないです」と考えていると思う。
 
だいたいゴチャゴチャ言うマスコミが、朝日・毎日の新聞と、NHK、TBSのテレビだということにも国民は少しづつ気がついていると思う。そのほか地方各紙の中にも、相当偏狭な論陣を張るところがあると思うし、地方在住の皆さんの中には、地方紙を第一紙と考えている人たちも多いので、なかなか、やっかいである。
 
さて「ねじれ」が解消されたら、しばらく安定した政治環境になるだろうか、そうではない。先にあげた各マスコミは、安倍政権の支持率が高い中では、表立ってモノを言えないから静かなだけだ。
 
とにかく、これらのマスコミは、何かギャンギャン言える材料ができるのを待っているだけだ。
では、これから起こりうる陥穽は何が考えられるか。
 
①消費税引き上げに伴う社会の反発、景気回復貴重の鈍化
中国経済など、国際社会に端を発した経済危機による国内の混乱
③中国の尖閣関連の新たな動きに対する国論の不統一
④国内経済の回復が中小企業・低所得者層に浸透する速度が遅いことによるアベノミクスへの批判の増大
⑤内閣・与党から出る失策もしくは不協和音をついたマスコミの批判攻勢
 
このほかにも、いろいな要因は考えられるが、当面は、こういったりスクがつきまとうだろう。とりわけ、①の問題は悩ましい。①は④とも相乗的な負のスパイラルを起こしかねないからだ。
 
消費税の引き上げは、国際的な信認問題ともリンクするから、引き上げ見送りによる金融麺でのショックも意識しなければならず、実に難しい対応となる。
安倍政権のブレーンの中でも、この判断は分かれているに違いない。多くのブレーンが「それなら行ける」という処方箋を現時点て゜は出せないでいるのではないかと思うが、残された3ケ月ほどの期間に、何とか知恵を絞り議論を尽くして、ある程度の処方箋を示して欲しい。それがブレーンの任務だと思う。
 
外交の巧拙も重要になっている
 
②と③は中国リスクだが、何がいつ、どう飛び出すかわからないのが、この国を見る難しさだ。明らかに国内的な体制不安要因を抱えている国の、その割には国際経済面で、世界中のどの国も依存度を高めてしまっている中での、突発的なリスクの表面化に、的確に対応していくのも結構難しい。
 
昨年9月9日、ロシアのウラジオストックで開催されたAPECにおいて、中国の胡錦濤国家主席野田総理と15分間ほど立ち話をする機会があった際、胡主席から「尖閣国有化の決定は認められない」とクギを刺されてしまったのに、野田総理は翌日国有化閣議決定の宣言、さらにその翌日決定した。これなどは、ことの重さを推し量れない政権の稚拙さというしかない。
 
すでに、国有化について両国とも国論が煮えてきている中で、野田総理胡主席が会話を交わすような機会が想定されれば、どのような対応をとるべきか、何もシュミレーションされていないということがわかる。
 
この場合、胡主席に先にそう言わせてしまっては外交の敗北であり、言われたから国有化を見送ったのでは、敗北が顕在化してしまう。やはり、相手の出方を幾通りもシュミレーションして、その対応を確固たる考えのもとに立てなければならない。この場合、両者が会うセッティングをしたこと自体が外交上の失策ということだ。結果論だなどということは許されない。ましてや細心の注意が必要な中国が相手である。
 
最近、出版された渡部昇一氏と日下公人氏の対論「安倍晋三が日本を復活させる」の中で、安倍総理の外交能力の高さを示すエピソードとして、6年前、安倍さんが総理になって、まず中国を訪問した際、出迎えた温家宝首相に、耳元で一言ささやいた話が紹介されている。安倍総理は「北朝鮮による拉致問題は中国にもありますよね」と一言だけだとのことだ。
 
その一言が何を意味していたか。中国側が、その問題を出させないよう、いろいろ工作をしたのに、効き目がなかったことに対する驚きと、痛いところを見事に突いてくる安倍総理に対する驚きで、一瞬、温家宝が棒立ちになったというわけだ。
 
外交は、常に国と国の国益を賭けた勝負の場だ。政治家としての能力の高い低いの重要な部分が、この外交の場での処し方であり、それを可能にするのが外務省をはじめとした官僚レベルの、さまざまな準備だ。
 
このほど外務省は斉木さんという安倍総理の信頼厚い方がトップになられた。心強い限りだ。
強力な外交布陣で、この難しい局面を乗り切ってもらいたいと切に願わずにはいられない。
 
これから読みたいと思っている本
 
さて、このあとは、参議院選挙の結果が出たあとの国内の雰囲気をみて、またコメントしたいと思う。
最近は、さきほどの本のほか、小川榮太郎氏の「国家の命運」(キャッチコピー・安倍政権はぎりぎり間に合った、奇跡の政権である)を読みたいと思っている。小川氏は、ご存知のとおり、昨年秋の自民党総裁選挙前夜、安倍氏を復活させようと奔走していた三宅久之氏の行動を後押しするように「約束の日・安倍晋三私論」を上梓し、安倍総裁復活の流れに一役買った方だ。
 
それについても、読後感をもとにコメントしたいと思っている。
 
一方、鈴木宗男氏と佐藤優氏の対論だろうか「政治家抹殺」という本も読んでみたいと思っている。「戦後政治は官僚と政治家の抗争の歴史である」「政治家諸兄よ、明日はあなただ!」というキャッチコピーが踊っている。
 
私も、情報をすべて握っている官僚が組織的にやろうと思えば政治家抹殺は簡単なことであり、これまで多くの政治家がその毒牙にかかったであろうことは想像にかたくないと思っている。
これまで石原慎太郎氏が何とかしようと思っても、ヘタをすれば自分が抹殺される危険を感じていたから、途中で都知事に転じたのだろうし、橋下大阪市長が、威勢のいい官僚支配打破を言っていられるのも、中央官僚機構に、まだ、ずかずかと踏み込んでいないからであろう。官僚支配打破などというのは、国民大多数の圧倒的支持という背景がなければできない。国民の多くは官僚支配打破の必要性と、自分の日々の暮らしとをリンクさせて考えることまでしないから、いつまでたっても国民大多数の支持など得られない。
 
橋下氏が今後、どのような政治家になっていくのか、なかなか不透明だ。現在の安倍総理のように、何年か任せたいと思うようになれる人材なのか、小沢一郎氏のように、期待できそうだと考えたけれど、実は期待したことが間違いだったと思う人材なのか、本当に見極めが難しいものだ。